タイトルから分るように「ドクトゥール白ひげ」こと徳島逓信病院院長の齋藤先生の回想記だが、白ひげ先生の探求心がものすごい。留置人健診を頼まれれば刺青鑑賞に目覚め、パチンコに熱中すれば統計学が通用するか試してみたりする。
専門分野である内分泌学や医療においても同様で、多毛症に悩む女性の治療や自らの胃がん手術後の後遺症の解決に至る過程は小説を読むかのごとく引き込まれる。
一例を紹介すれば、白ひげ先生は胃がん手術後、癒着性の腸閉塞を再発、トイレで七転八倒しているうちに、背中のある部分をさすると腹痛が遠のくことに気づく。ここから苦悶のなか再現性のある方法を探求し、腸閉塞の発生を抑えることに成功。後日、同症状に悩む患者のために文章で体験を発表。それが“齋藤式「腸閉塞克服術」”として広がり、ついには海外の医学雑誌に掲載され、野球の王監督から直接お礼の電話が来る。
読んで感じるのは、白ひげ先生の視線の優しさだ。目の前の人に真摯に接し、問題解決のために全力を尽くす。その姿は、地域で住民の困難事例などの解決に取り組む保健師の姿にも重なる。白ひげ先生がさまざまな事例に対しどのように対処したかは、保健師活動にも十分に参考になるはずだ。
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